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「現在、達樹様の生命が危ぶまれています」
四井の社用車に乗せられて、唐突に話された言葉に、信憑性も何も無かった。
だけど、藤原さんの真剣さは伝わった。
「達樹様の父上であります、達臣様は、四井の名を汚す、達樹様を良く思っておりません。四井グループ総裁の立場で、スキャンダルを嫌って、実子でも、切り捨てる。亡き者にしかねない意向なのです」
亡き者って、殺人って事かよ。
「冗談でしょ。スキャンダルって、その、オレとの事ですか?」
改めて自分の口から言うと、少し抵抗があったが、オレは達樹を愛している、それは事実だ。
「その通りです」
至って真面目に応えてくれた。
「じゃあ、オレを武力行使で引き離すなり、極論、オレの方が亡き者になるのが、普通じゃないですか」
「それこそ、スキャンダルになります。発覚すれば、四井グループ一環の終わりでしょう。
堀江様には、絶対、どんな事があろうとも、危害を加える事は無いと断言いたします」
妙に説得力があった。
四井グループ総裁から見たら、実子もオレも、同じくらい、ただの駒に過ぎないのかも。
「それだけ、四井グループとは、大会社を超えた、怪物なのです」
息を呑む。
より、リスクの軽い方。
達樹を消す方が、自然だ。
例え、オレが訴えたところで、誰も耳を貸さないだろうし。
オレは恐ろしくなって、寒気を感じた。
察したのか、藤原さんが口を開いた。
「堀江様、お願いです。
どうか、達樹様と別れて下さいませ」
ガバッと、布団を跳ね上げた。
また、あの夢を見た。
少し息が荒い。オレは動揺していたのか。
なんなのだ、この夢は。
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