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半蔵門線に乗り換えると、まばらに空いている席に座る。
社に戻ったら、報告書を作らなくてはならないな。ああ、道路使用許可も取ってこなくてはな。
やることは沢山ある。内装作業だけをキッチリやっているのは楽かもしれないが、目まぐるしく変わる毎日に追われるのも、悪くは無い。
車内を見渡せば、背広を着た先輩や後輩が目に付く。ここは、気苦労の挟間、一時の憩いの場になっているようだ。
「おい、俊。煙草、くれないか」
達樹が、助手席を見もせず、煙草をねだった。
オレは、煙草をくわえ、火を付けて、一口吸った後、それを達樹にくわえさせた。
口にメンソールの香りが残った。
「ありがとう」
「…なあ、達樹、オレ、やっぱり行かない方がいいんじゃないかな」
その言葉が放たれた途端に、達樹は急にハンドルを切り、減速をした。
車は、タイヤを滑らせ、激しいスキール音を響かせた後、路肩の緊急停車スペースに止まった。
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