3人が本棚に入れています
本棚に追加
会社に着いて、デスクに座り、パソコンを開く。
報告書を書く。
元請けさんからの連絡に対応する。
行動予定表を立てる。
作業員から日程終了の連絡を受ける。
また報告書を書く。
気づくと、18時を回っていた。
まだ、明日の現場の作業指示書も作らなきゃならない。
デスクワークは、終わりの見えない仕事ばかりで、気が滅入る。
大きな欠伸をして、またパソコン画面を見入る。今日も帰りは遅くなりそうだ。
「俊、今日も遅いのか」
出掛ける用意をしていたオレに、そっぽを向いて、達樹が言った。
達樹の、オレを見ずに何か言うのは、拗ねている証拠だ。
「ああ、今日のオーディション次第だけどね」
オレは芸能事務所に所属している。
でも、まだまだ駆け出しで、たまにオーディションの斡旋があるだけで、役の付く仕事は殆ど無い。故に職業はフリーターだ。
「待ってるよ。夕飯一緒に食べようぜ」
「ありがとう。行ってくる」
オーディションって言っても、面接のような事だけで、演技する事は稀だ。要はイメージに合う容姿をしているか吟味するだけ。
今日も志望動機などを訊かれただけだった。採用通達は2、3日後には分かるそうだ。
20時を過ぎたところだ。
かなり冷える。流石に12月の夜だけある。
オレは足早に帰路についていた。なにしろ家では大きな子猫が、腹を空かして待っているから。
最初のコメントを投稿しよう!