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「堀江様、堀江俊様」
突然呼びかけられて、振り向くと。そこには知らない老人がいた。
白髪頭のおじいさんだったが、姿勢良くスーツを綺麗に着こなしていた。
「あの、どちら様でしょうか」
おじいさんは微笑んだ後、深々と頭を下げた。
「唐突に申し訳ありません。私、藤原と申します。四井に仕える者です」
緊張が走った。四井とは、達樹の名字だったから。
そして、藤原さんは続けた。
「達樹様の件で、堀江様にご相談の事物がございます」
なんだろう。
オレは、気がかりに、藤原さんを見つめていただけだった。
帰宅は深夜過ぎになった。
物音を立てずに部屋に入る。
達樹が寝ている事を願った。
「俊、遅かったな」
部屋は暗かったが、キッチンの灯りで、達樹は読書をしていた。
「…ごめん」
そう呟いて、寝室に入ろうとした。
「夕飯、食べたか?」
「いや、でもいい、もう寝る、ごめん」
「俊…」
達樹を見ず、寝室に入る。
目に入ったのは、オムライスだろうか、ラップを掛けてテーブルの上に置いてあった。
暗くした部屋。ベッドの上で、藤原さんの話を思い返す。
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