桜の香り

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お互い出会わなかったように、何もなかったように過ごした。 林間学校。 恋模様にみんなたくさん色をつけた。 文化祭、体育祭、修学旅行。 賑やかな行事はとても辛かった。 そして朝礼の時間。先生から聞かされた。 久しぶりに聞く彼の名前。 彼は....転校する。 泣く。 と思った。 泣かなかった。 不思議となにも考えなかった。 そのまま数ヵ月がたった。 何気なく久しぶりにプレイヤーで音楽を聴いた。 流れた曲は.... 彼が好きだと言った曲だった。 そう言えばそんな話もしたなと思い出した。 いろんな事を思い出した。 桜のあの場所で何を話たか、どれだけの時間を過ごしたか、何を思ったか、彼の仕草、声、桜のあの香り。そして....プレゼント。 なおしておいた思い出を引き出すと同時に涙が溢れた。泣いた。止めることも、勢いがよわまることもなく。泣いた。 枕で顔を押さえつけ、毛布をかぶり。 声を必死で押さえつけ泣いた。 何時間たったのだろうか。 ご飯できたよー!と私を呼ぶ母の声がこの日はなかった。 ぐったりと疲れきっていつの間にか眠っていた。
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