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……人生なんて、不条理なことしかないじゃないか。
努力したって報われるとは限らないし、一生懸命が評価されるんだったらオレなんかもっと人生開けていただろうし、真面目にやっていたってそれが成果に結びつくって訳でもない。
先細りになっていく一方の世界で、こうして窓越しの霞んだ青空を何度も見て、オレが立っていただろう場所でライバルが活躍するのを観客席からぼうっと眺めて。
泣くことでとり返しがつくんだったら、オレは恥も外聞もなく泣きわめいたと思う。近くに通り過ぎた何も知らない女の子がドン引きするぐらいに、泣いて、キレて、当たり散らして、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして地面に膝をついただろう。
それができたのなら、整理がついたのかもしれない。野球部で故障した自分の立場も、この空疎になった心の内も。
ずっと野球で生きていくつもりだった。バカな考えかもしれないけど、それができるぐらいに実力だってあったはずだ。
来る日も来る日も、野球のことだけ考えて、それこそ自分の魂の全てをそこに捧げて、後少しでレギュラーで一二を争っていたはずだったのに……。
今、そこに立って活躍しているのは、自分以外の誰かだ。
……靭帯を裂傷して、走れなくなった自分(・・)以外の誰か。
プロ野球の指名も来ていたオレにとって、それは致命的な怪我だった。
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