霧の中

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 泣きじゃくる女性をどう慰めたらいいのか、弱り切った時、一気に霧が深くなってきた。  これは、また出会いからやり直しになってしまうのだろうか。  慌てたオレが、必死に手を伸ばして声を掛ける。 「また会えるよ! オレは、あなたのことを忘れないから……!」  だから、笑って欲しい。 朧げな記憶にあったあなたは、いつだってそうしていたのだから。  意識が鮮明になったとき、女性の姿はまた変わっていた。 先ほどよりも歳をとり、目尻のシワが増え、中年の容貌になっていた。 少しだけふくよかになった彼女は、洋服のワンピースを着ている。その随分古めかしいデザインに、オレは昭和の時代を感じた。 「……あら、あなたは……」  目を丸くした女性と視線があって、オレは懐かしさにぐっと涙を堪える。オレの知っている姿に随分近づいた彼女は、少し寂しそうな微笑みを浮かべた。 「……ねえ、アナタはだあれ?」
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