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遥川駆と幽霊らしく浮遊しながらその後ろにくっついている栄治は、上泉グラウンドに来ていた。
栄治にせがまれて、遥川がすぐに思いついた場所がここだった。日本一の流域面積を誇る河川、利根川の近くに作られたグラウンドでは、いつものどこかしらの学校が試合をやっているのである。
河川敷の丘の上を歩いていると、見知った人影に出会った。
「あら、駆じゃない」
「げ、瑠衣」
(おお、これはこれは、確か遥川の幼馴染の紅本ちゃんやな)
紅本が遥川の方を見て眉をひそめる。もちろん、栄治の姿は見えてないので遥川の発言に対しての反応だろう。
少女の名は紅本瑠衣(こうもとるい)。遥川の同級生で幼馴染である。
少し気の強そうな目つき。腰まで伸びた髪をサイドテールにしている。着ているのは学校指定の制服である。しかし紅満はスカートの丈を短く調節したり、リボンを緩めたりして、悪ぶり過ぎず、しかし型にはまらずと、ちょうどいい具合の着崩かたをしている。そのため、学生の身分でありながら、どこか大人びた雰囲気を漂わせていた。
「げ、とは何よ。モテない男日本代表みたなオーラ出してるんだから、この美少女に出会えたことを少しは喜んだらどうなのよ?」
「はっ、笑止。何が美少女だ。今朝だって会ってるだろ。こちとらお前の顔なんぞ見飽き」
ちょうどその時
「おい、見ろよあの子。スゲーかわいくね?」
「隣のやつ彼氏か? 釣り合わねーなおい」
そんなことを言いながら、自転車に乗った茶髪の男二人組が遥川たちの横を通り過ぎて行った。
「……はっ、笑止」
心底見下したような目をして、紅本はそう言った。
「ぐぬぬ」
本当のことを言えば紅本はかなりモテるのである。小さいころからお隣同士で、出来のいい姉くらいに思っている栄治にはよく分からない感覚だ。
まあ、顔立ちは文句なく美形だし、人付き合いも上手い。当然と言えば当然だろう。
あと、オッパイも形が良くて大きめである。なぜついているのがこの女なのか。
何一つ言い返すことが無かったので、遥川は話題を変えることにした。
「ところで、お前なんでここいるんだ? あんまり休日外出ないのに」
「んーまあ。スマホのゲームも飽きたし、散歩がてら偵察ってとこね。ほらそこ、極彩学院が試合してる」
(野球か!)
栄治が目を輝かせ紅本が指差した方を見る。
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