オーロラ、目に見えないものを観る

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「オーロラが出た」誰かの低く大きな声が聞こえた。  夜十一時のことである。 オーロラ観賞用のコテージの待合室でウトウトしていた僕は最初何を言われているのか分からなかった。 他の観光客がもこもこした防寒着を慌てて羽織って出口から出て行ったところで、つられるようにして三脚とカメラを持って外に出た。  たちまちマイナス十七度の乾いた風が顔に吹き付ける。 日本とは比べ物にならない、死を予感させる寒気が即座にまつ毛を凍らせた。 僕は北緯六十度を超える極寒の地にいたことを思い出した。 日付変更線を越えた日本からのロングトリップと疲労が僕の思考力を奪っているようだった。 そう言えばもう三十時間以上起きている。  目線を空へと向ける。 カナダの田舎、イエローナイフの街から更にバスで四十分も離れた郊外は灯一つなく、頭上には美しく輝く星空が広がっていた。 僕はその中に写真で見たような煌々と輝く緑色のカーテンを探した、……が見つからない。 「なんだ誤報か」とも思ったがどうやらそういうわけでもないらしく、ツアーガイドの男――熊みたいに胴の太い大男――がしきりに北の星空を指差していた。
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