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「賀川先生、女子会なんかに来ても大丈夫?『旦那さん』、何も言わなかった?」
藪から棒に、国語教師の谷口から尋ねられる。
「何も言うも何も…、一緒にいるのは週末だけで、今はまだ平日は別々に暮らしてるから…」
幸か不幸か、この日の女子会の話題は、理子の恋バナではなく、真琴の結婚と妊娠のこと。真琴はまだ真実が話せず、奥歯に何かが引っかかったような物言いしかできない。
「ああ、そういえば、まだ別々に暮らしてるって言ってたっけ…?」
質問をした谷口は、そう言いながら前菜のカルパッチョを美味しそうに頬張った。
「ははあ…。ということは、お互い別々の生活があるけど、想定外で赤ちゃんが出来ちゃって、とりあえず結婚したってことなのかな?」
と邪推するのは、理科教師の中山。
本当はそうではないけれども、学校での説明はそうすることにしているので、真琴は否定はせずに恥ずかしそうに肩をすくめる。
「まあ、順番はどうであれ、最終的には結婚するつもりで付き合ってたんなら、それでいいじゃないの」
石井がそこで真琴を助けるように、口を出してくれる。
実際には、『結婚するつもりで付き合った』期間などもなく、いきなり結婚してしまったのだが…。その事実も告げられず、真琴は苦笑いするしかない。
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