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そうやって真琴の幸せな話で、女子会はひとしきり盛り上がったのだが、ただ口を閉ざしていたのは理子だ。
真琴に関しての話題が尽きる頃、その理子が不意に口を開く。
「……賀川先生の旦那様って、どんな方なんですか…?」
グッと言葉を呑み込む真琴に、石井と谷口が意味ありげな視線を投げかける。
「ああ、それ。まだ訊いてなかった!どんな人なの?やっぱり、先生だったよね?」
明るい声で理子に同調したのは中山だ。彼女はまだ何も、真琴の相手について勘付いていないらしい。
ここで本当のことが言えたら、どんなに気持ちが楽になるだろう…。
でも真琴は、理子の心情を思いやって、やっぱり真実は告げられなかった。
「どんな人って……、近いうちに紹介できると思うから、自分の目で確かめてみて…」
そう言って真琴は笑ったが、その時にどれだけ理子がショックを受けるのかと想像すると、胸が苦しくなった。
そんなふうに心配事を抱えていては、美味しいはずの食事もろくに喉を通らない。いつも楽しかったはずのこの女子会も気分が乗らず、真琴は早く帰りたくなってくる。
自分のために会を持ってくれている、せっかくの好意を無にするように思うのは、本当に恩知らずなことだとは解っている。
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