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でも、このように思ってしまうのも、全ては〝秘密〟を抱えているせい。この秘密から解放されて、何の気兼ねもなく、今の状況をこの親友たちから祝福されたら、どれほど嬉しいだろう…。
けれども、真実を隠して嘘を吐いていた自分を、果たして親友たちは心から祝福してくれるだろうか…。
この秘密を抱える限り、真琴の気が安まることはない。秘密とは、それほど罪深いもの…。それを改めて、真琴は思い知った。
「そうそう」
デザートを食べ始める頃、真琴の浮かない顔に気が付いて、谷口が新しい話題を持ち出す。
バッグの中から数枚の写真を取り出し、テーブルの上に並べてみる。
「私の友達が、ジュエリーショップのバイヤーをしててね。参考のために、いろんな人の意見を聞きたいらしいの。どの指輪が良くて、どれはダメ?」
ダイヤモンドやルビーやサファイア…色とりどりの宝石が付いた指輪たちの写真を、皆はそれぞれ食い入るように見つめて、忌憚のない意見を出し合う。
そんな中でも口を開かない真琴に、谷口が声をかけた。
「賀川先生は、どれが気に入った?それとも全部イマイチ?」
問いかけられた真琴は、困ったように肩をすくめた。
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