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理子の何気なく投げかけられた言葉に、真琴は寒さを感じるどころか、凍り付いてしまった。
何も言葉を返せずに、真琴は理子の顔をじっと凝視する。その視線の意味するところを感じ取って、理子はその可憐な相貌に笑みを浮かべた。
「…お腹の赤ちゃんのお父さんは、古庄先生ですよね?」
そんなふうに確認されても、真琴には何と言って答えていいのか分からない。
このまま理子の言うことを認めて、事実を全て打ち明けるべきか…。
それとも、全校に公表するまでは隠し通すべきか…。
そもそも、理子はどうしてその事実を知っているのか…。
戸惑って何も発せられない真琴に、理子は開き直ったように言葉を続ける。
「……実は、少し前に、古庄先生に告白したんです……。3月で任期が終わって、離任してしまう前に思い切って……」
――……ええっ…!?
真琴は息を呑んで、自分の耳を疑った。その事実は古庄からも聞かされておらず、真琴の驚きに、さらなる追い打ちをかけた。真琴の知らないうちに、どこで、そんなドラマが展開されていたのだろう…。
「…でも、フラれてしまいました。その時に古庄先生が言ってたんです。今はまだ事情があって公表できないけど、心から愛している人と結婚したんだって……」
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