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理子にとってはとても悲しくて辛い話を、ただ淡々と語る。真琴はただ耳を傾けるだけで、相づちさえも打てなかった。
「それから、古庄先生を見ていると……、その『心から愛している人』というのが賀川先生だってことは、すぐに判りました…」
この会話を、遅れてレストランから出てきた中山が聞きつけて、目を丸くする。
「…えっ!…えっ?!賀川先生の結婚相手って…!」
と、騒ぎ出そうとしたところで、谷口から肩を掴まれ、石井から口を塞がれる。
「校長から、相手が古庄くんだってことは『秘密にしろ』、って指示されてるみたいよ。だから、賀川さんは打ち明けてくれないの」
石井が中山の口を押えながら、小声で事情を説明する。
「そう!秘密にしてるんだから、知らないふりをしてあげなきゃダメよ」
石井に補足するように、谷口も声を潜めて中山に忠告した。
「……二人とも、知ってたの?!」
中山は同じくヒソヒソ声で、石井と谷口を見つめ返した。
「私は校長から直接聞いたの。…その前から勘付いてはいたけどね」
したり顔で石井が笑みを含み、谷口は開き直ったように肩をすくめる。
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