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そんなことを考えていると、真琴の中に一抹の不安と寂しさが芽生え始める。このどうしようもない感情は、古庄との新しい生活に踏み出すための代償のようなものだ。
真琴は車のウインカーを出し、自分のアパートから古庄のアパートへと進路を変える。
無性に、愛しい人に会いたくてしょうがなくなった。
今日は平日だし、明日だって職員室で古庄には会えるし、4月からはずっと一緒に暮らせる。
こんな時間に訪ねたら、多分古庄はびっくりするだろう…。
それでも古庄は、こころよく部屋の中に迎え入れてくれて、きっと優しく抱きしめてくれる…。
いつでも両手を広げて待ってくれているような、古庄の真琴に対する普遍的な愛情は、もう疑う余地もなかった。
優しく可愛がってくれる両親、心から信頼できる友達――。
そんな温かい人たちに支えられ、どんなに明るい幸せに包まれていても、真琴が一番求めるものは、古庄だけが与えてくれる。
今はただ…、真琴がお腹の赤ちゃんを守っているように、この不安や寂しさごと古庄に包み込んでもらいたかった。
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