深酒の代償、締めておいくら?

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「え?」 「安藤さんが、パンダが欲しいと言って抱きしめて動かないものだから、僕が現場監督に掛け合ったんです。売り物じゃないと言われましたけど、無理言って譲って頂きました。ほら、一筆書いて頂きましたよ」  彼は懐から一枚の紙を取り出すと見せてくれた。  な、何というカミ対応!  さすが名前に神が入っている神崎賢人君である。彼の後光が眩しくてサングラス無しには真っ直ぐ見ることができません。  そうか! 神様が天使、神崎君を遣わしてくれたのか。ありがとう、神様! 私は神の存在をシンジマース。  心の中で手を組み、跪いて天を仰いだ。 「神崎君もありがとう」 「も?」 「う、ううん。お金! 払うわね」 「いえ、中古品で買い換えるところだったそうで無料で頂きました」  何と損害額が70,640円で済んだ! 「……すみません。僕が安藤さんにたくさんお酒を勧めてしまったせいで」 「そうだっけ?」  記憶が無いけど、神崎君がお酒を勧めてきたんだ。普段からストレスが溜まっている時にはお酒を飲みすぎるきらいはある。勧められてつい飲んでしまったんだろう。 「酷いな。そんな事も分からないくらい酔っ払っていたんだ。どうりで側にいさせてくれた訳だよ」  彼は一つため息を吐く。が、すぐに唇に笑みを湛えた。 「それにしても、職場ではクールで切れ者の安藤さんのこの姿、皆が知ったら驚くでしょうね」 「え」  ようやく自分が彼の前で晒した醜態にまで気が回り、冷や汗が流れた。 「何をしたか聞きたいですか?」  イエ、全く。  しかし今度は敢えて空気を読むつもりはないようだ。私が首を振って否定するよりも前に彼は口を開いた。 「人形相手に『どうせ私は無表情の安藤ロイドですよ。可愛げがない女ですよ。君も分かるよね? よし、仲間だ。二人で朝まで語り明かそう!』と絡んで連れて帰ろうとしていました。安藤さんって、実は結構感情豊かで楽しい人ですよね。先程からの様子も面白いし」  彼はそう言うと、耐えきれないようでくすくすと笑う。  わあぁぁぁ!  熱が上気し、頬が燃えるように熱くなる。 「お、お願い神崎君! 皆にこの事は言わないで」 「さあ……どうしましょうか」  手を合わせて懇願する私に対して、神崎君は少し意地悪そうに笑った。  あ、あれ。彼はこんな表情を見せる人だったっけ。
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