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1人、夕暮れの中帰宅をのんびりと再会した猫の足元に、なんの気まぐれか一匹の猫が擦り寄ってきた。
「おんや? 俺なんも旨いもん持ってへんで?」
そう言いつつゴロニャンと額で脛の辺りをグリグリする様に笑顔を見せた。サッとしゃがみこみ両耳の間や首、背と撫でていきついには柔らかく小さな小動物を抱き上げてしまっていた。
猫は猫好きであった。何と言うか、言わずもがなという感じではあるが。
「うーん、ちょっとガサついてんなお前。首輪はしてねえけどこの懐き具合……捨てられたか?」
なおーん。と返事をするかの様にタイミングよく鳴いた猫に頬擦りをして、猫はあっさりと連れて帰ろうという決断をする。
……の前に動物病院にでも行って健康診断させてこようか。店の姉ちゃんらに万が一にでも病気なんてさせられへん。
「にゃーお」
「ふんふん、可愛えぇなお前。右前足だけ白い黒猫やから……靴下片っぽ……お前の名前は『片っぽ』に決まりや!」
「みゃ……なぉん……」
意気揚々。
猫のネーミングセンスに顔を顰める“人間”がいない帰路、黒猫を抱えてるんるんと歩く彼は、やはり人懐こそうな一高校生にしか見えなかった。
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