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片栗も一緒に連れて来ていた猫は、ベンチの側で日向ぼっこをしていた彼女を呼び戻し、自分のスマートフォンを源造から受け取る。
「儂は別に……」
「そない事言わんで! ほらほらピースやでゲンゾー!」
「にゃーん」
半ば強引に源造の左半身に密着し、右手でスマホを翳し自撮りする。
カシャ、と軽やかなシャッター音を響かせたスマホをニマニマと覗き込んだ猫はふと首を傾げた。
「ゲンゾーの後ろに誰かおるで……」
「はっ? ……ちょぉ、坊やめてくれなはれ。儂そーゆうんは苦手やて……」
図体デカイ癖してなぁにお化けなんかにビビってるんだい、と邦美あたりなら言いそうなものだが、猫にとってはギャップ萌要素でしかない。というのはここではさて置き。
猫は片栗を抱えたまま源造の背後、公園の入り口の方へと走り、車進入禁止の柵を通り過ぎ通りに出て左を向いた。
そして、
「おーい、ジョーちゃん。何しとん?」
ゲンゾーの背後に写り込んでいた知り合い、同級生の城嶋に声をかける。
「んん? あっれ無視かいな! ジョーちゃんって」
しかし、城嶋は振り返らずにスタスタと歩き去ってしまう。確かにコレと言った用事はないが、挨拶くらいしてくれたってえぇやない。と頬を膨らませた猫は、源造に「知り合いがおったから声かけてくる」と言い残しその後ろ姿を追いかけた。
「なぁなぁジョーちゃん、聞こえとぉやろ? 無視とか悲しぃわ」
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