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普通の速度で歩いていた城嶋にはすぐ追いつけ、片栗を左手で抱えていた為、右手で左肩を叩きながらそう声をかける。
「……アンタ、俺が嬢ちゃんに見えるなら眼科行った方が良いぞ」
ようやく振り返った城嶋は……
猫の手を振り払って、
低い声で迷惑そうな顔を隠しもせず猫の方を向いた。
「何ゆーとん!? 城嶋の『じょう』からとってジョーちゃんやん。それと名前の譲(ゆずる)の音読みとも掛けてるって、最初に説明したやん?」
ちゃん付けされる事に違和感を拭えないと最初は渋っていたものの、最近は特に嫌がる素振りもなかったのに。
城嶋の態度に困惑して首を傾げた猫に、城嶋の視線が突き刺さる。
うららかな休日の昼下がり。
人っ子一人いない通りは、穏やかに静まり返っていた。
「城嶋…………譲……? もしかして…………あっ」
ボソリと呟かれた『譲』の響きに、もしやと猫が勘付いた瞬間、城嶋……否。
城嶋のそっくりさんは片栗を指差した。
「片っぽ! お前どこ行ってたんだ!!」
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