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「もう高校生やでぇ? ベッドの上まで連れてってくれりゃぁそれなりの色も見せてやれるってぇ」
磨き上げたグラスを並べ、月末の金曜である今日は羽振りの良い客がコレでドンペリを飲むんだろうかとチラリと考えた。
「そういう問題やあらん、こないなガキに手ぇ出せるかっちゅう話や」
母の営む店は関東内にあり、猫自身生まれも育ちも関東であるが、世話係の源造の影響で中途半端に関西弁を扱っていた。
かくいう源造も中卒で上京してきているからか、関西出身の者からしてみれば“エセ”と感じる訛りで喋る。その微妙な言葉の響きすら猫にとってはプラスポイントであるが。
「今日もつれねぇなぁ、ゲンゾー。俺はこないに愛しとうのに!」
「坊が好きなんは外見だけやろ」
「見た目は大事やん?」
顔を合わせるたびに繰り返している埒のあかない会話を(猫が一方的に)楽しんでいると、店の裏口から姦しい女声が響いてきた。
「おっ、姉ちゃんたちのお出ましや」
「ねこの~、元気ぃ? ゲンゾーとはもうヤったぁ?」
派手めのメイクを施し体のラインを強調したドレスを纏った、この店の従業員である十数人の女性たちが愉しげに笑い合いながら店内に入ってくる。
その内の一人、幼顔と小さな体躯に不釣り合いな巨乳が特徴的な女性が猫に声をかけた。
「ミィナちゃん今日も可愛えぇね! ゲンゾーは今日もつれへんわぁ、慰めたってぇ」
「やぁだ、猫だって可愛いわよ、でもありがと! こんなに可愛い子ほっとくなんてゲンゾーったら不能なのぉ?」
ミィナ、は彼女の源氏名であり、童顔であるが猫より歳上で、彼女とも猫は長い付き合いがある。甘えた声をだしミィナの胸に顔を埋める真似をすれば他の女性たちも次々に猫に寄って行く。
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