猫2

3/3
前へ
/34ページ
次へ
しかし、城嶋は緩い猫の言葉をガン無視する。保健室を見回し咲田らが全ての作業を終わらせてしまった事を悟り…………パッと振り返り猫たちに背を向け怒鳴った。 「おいコラ、テメェのせいで間に合わなかったじゃねぇか!」 「わーんごめんなさい! 譲先輩が構ってくれなくてついムキになっちゃったんです!」 「この後に及んで人のせいか、アァ!? 良い度胸だ、そこで死に晒せ!!」 ……咲田と猫は顔を見合わせた。 やれやれと肩を竦める猫に、咲田も苦笑いを返す。 勿論、その細腕でよくもまぁと思える様な腕力を用いて、自分よりずっと背の高い一目でイケメンと分かる爽やかフェイスの後輩を締め上げる城嶋に対して、である。 爽やかイケメンこと順本 純義(じゅんもと すみよし-15歳♂)は、今年の新一年生であり、新保健委員でもある、猫が『後輩指導』と称した城嶋が手を焼く後輩だった。 彼は入学式の日に城嶋に一目惚れしたのだと言い、同じ保健委員になってからというもの忠犬かと周囲に言わしめるワンコっぷりを発揮している中々の強者だが、時折空気を読めず今日の様に城嶋の怒りを買う事もしばしばだ。 今日の城嶋遅刻の原因はこの後輩である様だ。 「ジョーちゃん、そろそろ離したり? 委員会は俺がおるからええけど、SHLの遅刻は先生ぇ等許してくれへんよ?」 猫が示す通り、朝のSHL開始まで残り5分もない。咲田がサッサと手荷物をまとめ保健室の電気を消す。保健医がしばらくとしないうちにやって来るだろうから施錠はなしでいい。 猫も彼女の後を追い、城嶋と順本に一応「遅刻はあかんでぇ」と声をかけてからその場を離れた。 「だって先輩昨日も無視したじゃないですか! ゲーセン近くで俺見かけたんですよ!」 「だから昨日は出掛けてねぇって!」 「あーヤダヤダ、夫婦喧嘩は犬も食わないってのはああゆー事やんね」 「うーん、あれはまた違う気もしますが……」 背後で尚も続いている同後輩らの遣り取りに振り向く事すらせず肩を竦めた猫に、咲田はやはり苦笑いで返した。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加