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町に着くと、賑やかな音が耳を刺激する。
僕は辺りをキョロキョロ見回しながら、黒髪の子の後ろについて歩いた。
暫くして畑が見えると、今度は静かでのんびりとした風景が広がる。
「もうすぐ家につくからね」
そう言った直後に足を止め、黒髪の子は近くの物陰に隠れた。
「……あいつ、またいるよ。デートしてくれって、しつこいんだよね」
黒髪の子が覗く視線の先に、雄のゴリラがいる。
……違った。
ゴリラみたいな男の人だった。
そうか。あのゴリラに会いたくないんだな。
ゴリラは不自然に周囲を確認しながら、どんどん近づいて来る。
その時、黒髪の子が小枝を踏んでしまった。
パキッ!
「ん? なんだ?」
ゴリラが迫る。
黒髪の子は怯えている。
……やれやれ、仕方がない。
僕はタイミングよく、ゴリラの目の前へと飛び出した。
「めう!」
「……なんだ。変な顔のネコか」
……
……
ゴリラは去って行った。
そして僕の心は傷ついた。
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