one`first love 初恋

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 瑞穂と出会った入学式当日、俺は式が始まる一時間前に高校についてしまった。  理由は、借りたアパートが、高校まで徒歩で三十分以上かかってしまうから。本当は、もう少し、近い所を借りるつもりだったのだが、予算の都合で借りることができなかった。  だから、遅れるといけないから、早めにアパートを出たら一時間前に到着してしまった。  なので、入学式が行わる体育館の近くで時間を潰すことにした。  どこかに座れるところはないかとあたりを見渡していたら、座るのにちょうどいい大きな石を見つけた。 (ここでいいか。でも、このまま座ると制服が汚れるから、タオルを下に敷いてと)  持ってきたカバンからタオルを取り出し、石の上に敷き、その上に座った。  そして、もしものために、準備してきた小説をカバンの一番下から取り出す。 (結局、これのお世話になったぁ)  読み始めてどれくらい時間が経つたのだろう。 「あの? それって、ホトギスさんのサクラシリーズですか?」 「えっ!」  突然の出来事に俺は、思わず変な声を出してしまった。 「あぁ。ごめんなさい」  謝って、逃げるようにどこかに行こうとしたので、急いで本を閉じて、この主(ポニテールの女の子)を呼び止めた。 「あぁ! ちょっと! 待って」  俺に呼び止められた彼女は、動揺しながらも再び自分の所に戻ってきてくれた。  そんな彼女に、俺は、言葉を選びながら声を掛ける。 「さっきは、いきなり声をかけられてびっくりしただけだから。あの? 僕になにか? ご用ですか?」 「あのあぁの?」 「はい!」 「ファンなんですか? サクラシリーズの?」  ホトギス著 偽探偵櫻木さくらが活躍する探偵小説。ファンの間では、サクラシリーズとも呼ばれている。  現在 三作品まで発売されている。  当時、自分が読んでいたのは、第一作目の偽探偵櫻木さくら 学校の謎を解く? 「あぁまぁ? 面白いですよねぇ? 作品の臨場感もですけど、主人公の櫻木さんを見下す秘書の陽炎さんとのやり取りも。あの? もしかして、ファンなんですか?」  俺は、逆に彼女に同じ質問を返してみた。  彼女は、作者、タイトルまで知っていた。もしかしたらこの作者の純粋なファンなのかも知らない。 「あぁ! はい!」  自分の質問に満面の笑みで「はい」と返事を返すその顔に、朧は思わず、 「……かわいい」 「えっ?」  いきなり聞えてきた「かわいい」と言う単語に、女性は思わず朧の方を見る。 「あぁ……すみません。笑った顔がかわいいかったので」 「……」  朧からの予想外の告白に、頬を赤くする女性。 「あの?」 「はい」 「お前教えて貰っていいですか?」 「蜩朧です」 「……蜩さん」  朧の名前を小さく声で呟きながらも、朧に向かって、自分の左手を差し出す。 「私は……春村瑞穂です」 ★
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