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青年がまじまじと俺の足を見つめる。そして溜め息をついて、違う、とだけぼやいた。俺には何が違っているのかさえ、さっぱり分からないが。
「足じゃないとしたら、履き物だな。お前の履き物はどこだ?玄関か?」
「あ、はい。玄関で脱ぎましたけど」
「わかった」
それだけ言うと、青年は立ち上がってすたすたと玄関の方へ歩いていってしまった。俺もなんだか着いていかなくちゃいけないような気がして後を追う。
後ろから待ってよ~!という女の子の声がしたので立ち止まって、それからは歩幅を合わせて玄関へ急いだ。
「……お前の靴、これだろ」
玄関では青年が、鼻をつまんで汚いものでも触るみたいに俺の新品のスニーカーをつまみ上げていた。
「そうですけど……。あの、一応新品なんでそんな汚くないと思いますし、臭くもないと思うんですが」
「はあ!?新品!?」
青年は声を荒げた。有り得ないとでも言うみたいに。
しかし、何か心当たりもあるようで、恐る恐る、といった具合に尋ねられる。
「お前これ、いつおろした」
「え、さっき……今日の夜ですけど」
「馬鹿が!履き物は夜おろすなって言われなかったのか!?ああ!?」
「えっすみません!!」
なんでそんなに怒鳴られなくちゃいけないのかいまいち分からないまま頭を下げる。
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