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主人の作るご飯が好きだ。
私は、少し寂れた、しかし不思議と人のいる小さな町に住んでいる野良猫だ。
他の同胞もそれなりにこの町に根を張り、私達はそれなりに自分達の縄張りを意思と力を使って形成していた。 他の町の者達はどうかは分からないが、必要以上に群れない事がこの町での暗黙の了解である。
そんな中で私は、ある食堂の裏口に目をつけた。 その食堂の主人は優しく、しかしなるほど時代が時代なら『鬼』とでも呼ばれそうな顔つきをしていたのを覚えている。 それが厨房では刃物を持って働いていると言うのだから若い者達はなるほど嫌でも気を引き締めねばならんのだろう。 人とはいつも難儀なものである。
「おーうドラ吉、腹空かしてるか?」
主人は、よく裏口でぼうっとしている私に、余ったご飯を持ってきてくれる。 これがまた美味で、同じ野良猫の中でもこのクオリティのご飯を食しているのは中々居ないだろう。
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