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「そうだ、、、、、、、ヤシの実がまだ、、、、、、、」
転がった二つのヤシの実の一つを拾い上げ揺らしてみた。中からは確かに水分の揺れる重みと音が聞こえる。
喉と腹が同時に鳴った。空腹は勿論水分を取らない事により頭がなかなか回らない状態までいっていた。
「石だ。そうだ石で叩こう。駄目なら実どうしでぶつけ合えば」
宣言通り近場の海岸を歩き鋭利そうな石を拾う。握りやすい大きさのそれはまさに手頃な感じが有った。
ーーーーーーーー叩けた叩け叩け叩け!!!!
握った石で皮膚が切れ、石には血が滲んでいた。何度も同じ作業を繰り返す。
しかし、どう頑張っても割れる気配が見えない。記憶を失って一日半。もしかするともっと以前から水分を取っていなかったのかも知れない。
男は機械の如くただヤシの実の様子を見ながら、痛みを無視するかのように石を実に叩き続けた。
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