このカラダは……。

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『さて、今日はどちらが出て来てるんだ?』 平八郎は心の中で呟く。千歳を生かす為とはいえ、その代償は甚大だった。お玉の妖力は絶大で魑魅魍魎がうじゃうじゃ湧いてくる始末だ。 千歳が主体だと、お祓い程度の力しか発揮できない。お玉が主体なら正に妖怪の力と言うにふさわしいパワーと破壊力を発揮した。 しかし、千歳の話しだと肉体に掛かる負担は凄まじく、お玉に酷使された肉体に意識が戻ると尋常でない痛みが全身を駆け巡り、のたうちまわることが度々あるのだという。 もっとも、妖怪の回復力で一時間もすると感じなくなるのだが、千歳は入れ替わった直後のこの感覚がイヤでイヤでたまらないと、平八郎にぼやいていた事を思い返していた。 しかも、お玉と同化した事で最近やたらと色気が増した千歳に男が寄ってくるのを平八郎は苦々しく思ってもいた。 千歳本人は余り自覚していないが所作や仕草が自然と男を誘っている事に気付いてない、そっちの方も千歳の祖父母から゛よろしく゛と頼まれてはいるのだが……。 時々、平八郎は巫女装束の千歳の後ろ姿に欲情をもようし、襲って仕舞いそうになる。彼は自分を抑えるのに必死だ、特に千歳の精神(なか)が、お玉の時は精神衛生上非常によろしくないので、ついつい態度も素っ気なく成らざるを得ないのだ。
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