このカラダは……。

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『今日は、千歳の方か』 神楽殿で巫女神楽を舞う千歳は、実に美しい所作で厳かに凛とした表情で立ち回る。 「さすがに、堂にいってるな、餅は餅屋ってことか」 神楽には、宮中で行われる「御神楽」と、それ以外の神社を中心に行われる「里神楽」に大別される。 「里神楽」の中の「巫女神楽」が一般的に巫女舞とされるもので、巫女がシャーマンであった時代に神がかりの為に舞われたものが、様式化され洗練されて、祈祷や奉納の舞になったと言われている。 そして、「里神楽」は、その形態から「巫女神楽」の他、「出雲流神楽」、「伊勢流神楽」、「獅子神楽」の四種類に分けられるが、実際には神社や地域ごとに千差万別だ。 さらに、古伝の神楽に対して、明治時代以降に創作された「近代神楽」は「豊栄の舞」(とよさかのまい)のように神社本庁が制定した祭祀舞のほか、「浦安の舞」や「悠久の舞」は神前神楽に分別される。 猫魂神楽は、古伝の舞の色合いを濃く残す様式だ、今の形は江戸時代初期に定まったと伝わっている。 一通り、舞終わり、千歳は額にうっすらと汗をにじませている。やがて神楽殿から千歳が降りてくると、下に居る平八郎に気づいた。 「あー、平八っつあん、来てたんだ」 「普通の千歳だな、今日は」 「はぁ!?、普通ってナニよ、普通で悪うござんしたね」 「まぁ、いい、今日はちょっと付き合え」 「えっー、年末の、この忙しい時期にー、マジー」
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