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第四話 喜べ
目を開けると、そこには『 貴志さん 』が私の手を引いていた。
私の生まれ育った店舗へ私を導いていく。
私の両手を掴んで引き寄せ、突飛ばした。
よろめきながら辿り着いた場所には、昔のままの店があった。
ガラス張りの玄関、扉を開けると入口横のレジスターで父親が帳簿を付けていた。
私に気付くと顔を上げ、私に微笑みかけて来た。
「お帰り」
ずっと聞きたかった。懐かしい声だった。
「じいちゃん、ひなこが帰って来たよ」
店の奥から祖父が出て来た。
「お帰り、ひなこ」
最後は呆けて10年口が利けなかったのに。
入口のちょっと先にある待合室に、やっと立てる位のコドモが遊んでいた。
誰だろう?
コドモは、男の子か女の子かも分からなかったけど、私の顔を見て笑いかけて来た。
夢はそこで、終わってしまった。
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