第一話 起きろ

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『 泥の海 』 で 就学前、6つの頃の話だ。 私はいつも一人だった。 夜遅くまで商売に勤しむ両親祖父母の目を盗んでは、一人外で遊んでいた。 ある日、夏の日の夕方。 私は二十歳前の男と出逢った。 「遊んであげる」 そう声をかけられた。 『 泥の海 』 の 端に建物と建物の隙間があってそこが死角だった。 そこに連れて行かれて、服を脱がされた。 上着もスカートも脱がされて下着だけだった。 商店街の敷地内に、パチンコ屋があって、私の家のすぐ裏だった。 2階の台所の窓を開けると寮の渡り廊下で、たまに人と目が合った。 そこの店舗の経営者の息子貴志さんは、4つ年上だった。 「うわぁあああ―――――」 同い年位の男の子を連れて、私を見つけてそう叫んだ。 私の服は投げ捨てられて、泥の海に浮かんでいた。 貴志さんは、私にチェックのシャツをかけてくれた。 思い出したくない嫌な思い出じゃない。 だから、思い出したんだと思う。 今日は、父の葬儀の日。 起きよう。 現実から、目を逸らさずに前を見なきゃ。
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