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ぼくはずっと黙ってその話を聞いていた。
というより、そもそも人間の言葉は話せないんだ。
隠れていた夕日が姿を現し、明るい眼差しを放った。
「うわぁ……」
少女はその光景に見とれていた。夕日の橙が草花を明るく照らして、辺り一帯は幻想的な雰囲気を醸し出す。心地よく体を包み込む風。その風に揺られてキラキラと瞬く草木の葉と、それが奏でる自然の音色。
「ねえ、猫ちゃん」
少女は輝いた目をそのままぼくへと向けた。
「また、ここに来てもいい?」
今までは、ぼくだけの神聖な場だった、この草原。だけど……
この子なら、別にいいや。
ぼくが尻尾をパタッと振り、一声鳴くと。
少女はこのきれいな夕日にも負けない、とても明るい笑顔を見せた。
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