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「勉強しなさいってママに言われるのはいやなんだけど、ママのことは大好きなんだ」
その声は、沈黙を破ったというよりは、沈黙の中に置かれた、とでも言えるくらいの静かな声だった。さっきとは違う、少し暗い声だった。
「お家にはね、ママしかいないの。パパはいなくなっちゃったの」
目を向けると、そこには寂しさを含んだ横顔で話す少女がいた。
「今日は日曜日だからママはお家にいるけど、いつもは夜まで帰ってこないの。頑張ったらがまんはできるけど、それでもちょっとさびしいなって思って」
小さい身体で、それでも少女は頑張ろうとしているのが分かった。
「わたしね、猫ちゃんが好きだから、ママにおねがいしたの。だけどお世話がたいへんだし、お金もかかるからむずかしいって言われて……」
すると少女は、手をぼくの頭の上に乗せ、優しくぼくの頭を撫でた。
「もし猫ちゃんが飼えるなら、あなたみたいな猫ちゃんがいいなぁ」
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