夕日の下で咲く

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夕日の下で咲く

 穏やかな風が身体の上を優雅に走る調べに、ゆっくりと目を開いた。  雲間から差す日差しが、木々の隙間を縫うように降り注いでいる。  いつの間にか眠っていたみたいだ。それでもまだ依然として明るいままの空を見ると、そこまで長い時間が経ったわけではないらしい。  一面に広がった緑の地面と生い茂る草木は、夏のしつこい暑さを和らげるだけでなく、その真ん中にいるだけでどこか心地良い、神秘的な雰囲気を感じさせてくれる。  ここがぼくにとって最高の憩いの場となってからは、それなりに長い年月がたった。  この場所を見つけたのがいつだったかはあまり詳しく覚えていないけど、それでも最初にふらっと訪れたときの印象は強く根付いている。  友達と喧嘩をしてしまっていつもの公園を離れたぼくは、どうしたものかと辺りをうろうろしていた。  自分が知っている土地から出るのはかなりの危険があることは散々聞いていたけど、その日だけは少しくらい冒険をしてみても良いような気がした。  住宅街の路地から抜け道を通ってしばらく歩いていると、今まで来たことのなかった公園を見つけた。あまり大きい公園ではなかったけど、そこにはたくさんの人や動物で賑わっていて、それが苦手なぼくは公園の中には入らずに周りをうろうろとしていた。  その公園の横に、木々に覆われた自然の坂道を見つけた。その坂を登ると現れた、自然の緑が広がる雑木林。草木の音に導かれるようにその中に入っていくと、この開放的な空間を見つけたのだ。  視界を覆う緑と近くに流れる河の音。そよ風に揺れる草木の音を聞いているだけで、高かった気温もどこか涼しく思えるような、そんな場所。あてもなくふらつきながら夏の暑さに困っていたぼくは、とんだオアシスを見つけたような高揚感に包まれた。  隣の公園と比べて、ここには人も動物もほとんど来ない。こうやって静かに風と草木の音に包まれ、自然の美によって和らいだ太陽の光を浴びることができるこの場所は、ぼくにとって今やもう欠かすことのできない大切な場所になっていた。
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