サンプル

3/5
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「う……っ」   目に涙が滲んでくる。なんだか惨めで、情けない気持ちになる。清い気持ちで慕っていたつもりが、それは性欲の一部だったと誰かに糾弾された気分だ。 (俺は小鳥遊先輩のこと、好きで……。血統書付きの高価な洋犬みたいなあの人に憧れすぎて、どうかしてしまったんだ) 男同士なのに。 小鳥遊は冷え症の一年のことなど、きっとなんとも思っていない。 もし悠真がこんな反応をしていると気付いたら、小鳥遊はどう思うだろう。きっと呆れて遠ざかる気がする。悠真が尋常でない気持ちを抱いていると分かったら、気持ち悪くなるに違いない。 (そんなのは嫌だ。先輩に嫌われたくない。俺の気持ちは隠すんだ) 今度モデルをしたら、なんでもないように振る舞おう。意識している素振りなど見せてはいけない。誰の目から見ても明らかに、普通の後輩だと分かるようにしないと。  悠真は涙ぐみながら下着を取り替え、洗面所で誰にも見られないように手が痛くなるまで洗った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!