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小鳥遊の声が聞こえてきて、急に現実に引き戻された。
「今度の夏休みに合宿があるけど、僕も記念で参加しようかと思っている。暑いけど熱海の温泉にでも行こうって提案してみようか。温泉に入ると血行がよくなるから」
「う……」
じわっと涙が出てきた。
(俺はそんな優しい言葉をかけてもらえるような人間じゃないんです。先輩が親切に言ってくれているのに変な夢を見て、顔さえまともに見られない)
その証拠にさっき頬に手をあてられてから下半身がじわじわして、股間が反応しはじめている。
(い、今だって半勃ちなのに……!)
小鳥遊と温泉になど行ったりしたら、裸を見られる。前を隠し続けられればいいが、手ぬぐい一枚なんて心もとない。それに完全に勃起してしまったら、手ぬぐいをかけてもばれてしまうだろう。
そんな姿を見られたら、きっと呆れられ、苦笑される。男同士で風呂に入っているだけなのに欲情しているなんて普通ではないと、いぶかしまれてしまう。
そうしたらもう、今まで通りに小鳥遊と付き合うことが出来なくなってしまう。
それは嫌だ。小鳥遊と一緒にいたい。このままの関係を維持して、先輩と後輩の関係を続けられたらそれでいい。
「赤い顔してる。悠真、どうしたの?」
座ったままの小鳥遊に顔を覗き込まれ、悠真は心の中を見透かされた気になった。
「だめです。俺、先輩と風呂なんて、絶対行けない……っ」
【サンプルここまで】
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