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怜斗の実家を訪れたその翌年、一年の交換留学の予定を変更してそのまま留学先の大学へ編入したことを菜々子さんの口から聞いた。
怜斗の帰りをずっと待っていようと決めた俺だったけれど、このままではもう二度と会えない気がして、菜々子さんに我を忘れる思いで連絡先を訊ねた。
だけど、菜々子さんは電話口で言葉を詰まらせるだけで、重苦し気に話してくれた。
『それが…怜斗ね、最近寮を出て一人暮らしを始めたみたいなの。
私、全然知らなくて…。
あの子、何も言わないし、心配になって電話してみたんだけど、全然つながらなくて…』
その口調から菜々子さんの疲労が伝わってきた。
いてもたってもいられなくなって、菜々子さんから教えてもらった方法で何度か電話を掛けてみたけれど、怜斗の声は聞けなかった。
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