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「家の都合で小さい頃から海外を転々として、せっかく仲良くなった友達とも少し経てばすぐに離れ離れになって。
写真を撮っても思い出すだけで、辛いだけだからって。
だから写真はいいって」
「……」
「母親の私が言うのもなんだけど、本当に手のかからない子だった。
昔から器用な子でね…。
誰とでもすぐに仲良くなっちゃって。反抗期もなくて、優しくて」
菜々子さんは膝の上に乗せていた拳にぎゅっと力を込めた。
「でも、その分いっぱい我慢させていたと思うの。
本当はそのままアメリカの大学に行きたかっただろうし、日本に帰るって告げた時はやっぱり寂しそうにしていたから」
そう言った菜々子さんの目は切なく揺れていた。
「あの子が日本に馴染めるのか不安だったのは私の方。
でも、すぐにその不安は消えちゃった。
…それは、健くんたちがいたから。
あの子が笑って過ごすことができたのも健くんたちのおかげなの」
菜々子さんは優しく微笑んだ。その笑顔はやっぱり怜斗にそっくりだ。
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