変わらない愛③

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それからはというと、約束通りこまめに連絡は取り合っていたが、頻繁に会おうという約束は互いに難しい状況にあった。 社会人一年目、しかもどちらとも部署が営業ということもあり、想像以上にハードな生活が続いていたからだ。 怜斗は得意の語学力とこれまでの経歴が認められ、高倍率の国外営業部に配属されたらしい。 その上、海外出張で世界を飛び回ることが多く、時間が合わない日々が続いた。 俺はというと、全国でもそれなりに名の知れた広告代理店に入社し、国内営業部に配属された。 営業といっても、一年目の仕事はもっぱらテレアポから始まる。 テレアポとは、いわゆるテレフォンアポインターの略称だ。 つまり、企業に電話を掛けまくって自社の売り込みをして、会う約束を貰い新規の仕事をとるという何とも言えない不遇な立場の業務だが、顧客のいない新人広告営業マンなら誰もが通る道でもある。 過去の求人雑誌を見ながら手当たり次第電話を掛け、中には丁寧に対応してくれる親切な方もいるが、大概は説明の途中で「必要ありません」とガチャ切れされるのがほとんどだ。 同期の大半は打たれ弱く、先方の冷たい態度を引きずっていたが、俺は断られると返って燃えるタイプらしく(元々負けず嫌いでコミュニケーションスキルは高い)、それが功を奏してか新規の契約を掴むようになり、上司からテレアポのセンスがあるとよく褒められ、経験とともに自信に繋がっていった。
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