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平野と佐々木さんは呼吸を忘れたままじっと見ている。
「…それは違うよ。
怜斗は白河さんのことを忘れたことは一度もない」
付き合っていた頃の幸せそうな怜斗の顔。
別れてからの苦しみ。
大切な彼女を失ったときの喪失感。
それらを思い出すだけで胸が痛くなる。
「佐々木さんの想いを否定しているわけじゃない。
ずっと見守ってきた君だからこそ言えることだから。
俺は部外者だけど…でも、やっぱりこのままじゃいけないって思うんだ。
佐々木さんだって本当は分かっているんじゃないの?
俺が言葉にしなくても、白河さんの想いに気づいているんじゃないの…?」
彼女は目を伏せて押し黙った。
静けさが漂う中、おもむろに伝票を手に取ると席を立った。
「もし、今も怜斗を想う気持ちがあるなら、連絡が欲しいと白河さんに伝えて欲しい。
八年前、何が二人をそうさせたか、どうして別れることになったのか。
それは全部俺が話すよ」
願わくはもう一度。
二人が笑う姿を見たいと思う。
「…最終的に白河さんに伝えるかどうかは平野や佐々木さんの判断に任せるよ。
…今日は来てくれてありがとう」
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