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「この広告依頼、私も担当しているの。
まだ異動してきたばかりでわからないことも多いけど…よろしくね」
続いて名刺交換すると、唯は「健くんと名刺交換する日がくるなんて…変な感じだね」と噛みしめるような口調で言った。
「そうだな」
何の感情も動かなかったが、仕事の一環として当たり障りのない返事をした。
大人になれば仕事と私情を適切に選別できるようになる。
完全に、俺にとって唯は元カノという位置づけではなく仕事の取引先相手だった。
ふいに桜井さんのことが気になって視線を向けると、彼女は少し離れた場所で俺と唯のやり取りを見ていた。
いつの間にそんなところに…。
「桜井さん、こっちにおいで」
笑顔で手招きすると、彼女はおそるおそるといった表情で頷き、こちらにやって来た。
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