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動揺をあらわにしたのは隣にいた彼女だった。
視界の端から感じる思いつめたような視線。
表情を見なくても、それはわかった。
クライアント先を出た今。
今なら、仕事の立場を抜きにして私情を絡めてもいいのかもしれない。
「…俺はもう、今さら話すことは何もないよ」
唯を見据えて、はっきりと口に出した。
「唯の話を聞いたとしても、俺の気持ちは変わらない。
8年前に俺が見たすべてが真実だということも変わらないし、今さら過去を振り返るつもりもない」
唯は石のように表情を固くした。
「俺との過去はもう忘れてくれていい。
出会った頃から全部、なかったことにしていい。
…俺もそうするから」
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