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翌週の月曜日、思った通り社内は彼女の話で持ち切りだった。
嫌な予感は大半が当たるもので、今まで彼女に見向きもしなかった男性社員はそのめざましい変貌に一瞬で態度を変えた。
男というものはつくづく単純な生き物だと思う。
またあのどす黒い感情が体内から浮き出ていくのを感じて、だけどあえて気づかないふりをして午前は業務に没頭した。
その日の午後、久しぶりに社食を訪れた。
月曜日の社員食堂は毎回うんざりするくらいの熱気で、今日は時間の都合上外食はできないという理由もあり、仕方なくの利用だ。
「桜井さん、すごく垢抜けたよな」
矢野先輩は桜井さんの近くの席にトレーを置くと開口一番言った。
「…そうっすね」
ドスッと音を立てて腰掛ける。
「さっきオーダーの前で他部署の男共が騒いでたぞ。
めっちゃ可愛くなったって」
彼女が可愛いことなんて、俺はもうとっくの前から知っている。
「飯に誘おうといろいろ作戦練ってたっぽい」
「…へぇ」
「どうした?
何か今日の健、機嫌悪くない?」
「別に」
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