変わらない愛⑥

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表示画面を覗くと電話の主は怜斗だった。 どうしてだろう。 理由はわからないけれど、途端に胸騒ぎがした。 「はい」 「……」 受話口から応答がない。 かすかに聞こえてくるのは車掌のアナウンスと人の行き交う雑多音。 そして、湿気で粘りつくような雨の音色。 それは怜斗がどこかの駅にいることを示していた。 「もしもし。…おい、怜斗」 「健……葉瑠が…」 とてつもない苦しみに耐えるようなくぐもった声。 衝撃で目を見開いた。 体がふいに熱くなり、心の中心がさっと冷たくなる。 ────葉瑠が…。 その名前を怜斗の口から聞いたのは実にどれぐらいぶりだろう。 状況を理解するのに時間が掛かった。 ただ、深刻な事態であることは受話口越しからでも手に取るようにわかった。
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