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詳しい話より先に今いる場所を訊ねた。
怜斗は居場所だけ伝えて押し黙った。
声にならない悲鳴。
助けてくれと言われているような気がした。
「…今からそっちに向かうから。絶対にそこを離れんなよ!」
気付いたらそう叫んでいた。
周囲がどよめいて、彼女は心配そうに下から顔を覗き込んできた。
「大丈夫ですか…?」
彼女の優しい一言に、次第に落ち着きを取り戻していく。
「桜井さん…ごめん。家まで送りたかったんだけど…」
唇を噛みしめた。
「帰り、大丈夫…?」と、続けた言葉はどこかに消えてしまいそうになるくらいか細かった。
「私は大丈夫です。電車も通っていますし、この付近に知り合いが住んでいるので最悪はそこに泊まらせてもらおうかなと考えていたところでした」
こぼれんばかりの笑顔に胸が締め付けられる。
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