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「おい、いいから落ち着け。大丈夫だから」
なだめるように声を掛ける。
それでも静まらなかった。
判断の針を狂わせるように混乱する怜斗に人目を気にせず叫んだ。
「お前が取り乱してどうすんだよ!」
ハッと、怜斗の息が止まった。
「苦しいのはお前だけじゃない。
とにかく、今は白河さんのことだけを考えよう」
真っすぐ目を見た。
怜斗は静かに頷くとようやく正気を戻した。
車で向かった先は怜斗のマンションだった。
走行中バックミラー越しに映る怜斗の姿。
口は一切開かず、ただずっと冷たくなった白河さんに温もりを与えるように抱き締めていた。
「俺のせいだ…」
薄暗いマンションの地下駐車場に車を停止したその時、怜斗は蚊の鳴くような声で発した。
そしてゆっくりと8年前の別れの真相を話し始めた。
俺は息の根を止めるようにその話に耳を傾けていた。
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