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「課長がそう言っているところ想像つくよ。
でも今日のオリエン後、一旦会社に持ち帰らないとね」
「営業だけで進めてはいけないってことですよね」
「そう。それから社内で協議をして競合コンペに参加するか決定するんだ。
プレゼンに参加するのは時間と費用が必要だし、営業個人で簡単に判断はできないのがルール。
プレゼンとなると制作部や媒体部も関わってくるしね。
でも持ち帰ったとしても会社はゴーのサイン出すだろうね。
規模が大きいし、もしうちが担当になったら会社の利益もすごいだろうし」
「…瀬川さんは怖くないですか?
そんな大きな仕事を任されて…」
怖気づいた小鹿のような瞳。
きっと大手取引をプレッシャーに感じ、今後のことを考えたら不安になったのだろう。
「怖いって聞かれたら怖いかもしれない。
でも、その分やりがいの方が大きいよ。
競争率の高い取引先ほど燃えるしね。
勝ち取った時の喜びは倍増だよ」
「…すごいですね。本当に尊敬します。
私も瀬川さんみたいになれたらいいな…」
「桜井さんは桜井さんらしくしていけばいいと思うな。
俺のやり方はあくまでも参考にしてくれればいいから。
今後もし、仕事のことで躓いた時は遠慮せずに頼ってね。
一人じゃないし、俺もいるから。
何かあったら助けるよ」
「…はい。とても心強いです。
ありがとうございます」
柔らかな微笑み。
顔の強張りがスッと消えたような気がした。
何度見ても、彼女の笑顔は飽きない。
君が笑う瞬間が好きだと、何度もそう自覚してしまうほど。
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