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約束より少し早い時間に中心部のオフィス街にあるクライアント先に到着すると、受付の女の子が快く迎えてくれた。
「担当の者がすぐに参りますので、今しばらくお待ちください」
その言葉に従って待つ。
隣に視線を向けるとやはり彼女は怖気づいたような表情をしていた。
華やかなロビーをおどおど見渡すあたりがなんだか新鮮で可愛らしくて思わず顔がほころぶ。
ふと背後からヒールの高らかな音が耳を通った。
きっと足音の主は今日のオリエン担当者だろう。
「…もしかして、健くん…?」
こちらをうかがうような声が聞こえて、振り向く前に息を沈めた。
一瞬耳を疑った。
けれど、その声の音色を俺は確かに覚えていた。
「唯…」
振り返るとそこには8年前に別れた元恋人がいた。
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