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新しい春風を吹き込んだはずの電車内は、そこに詰められた人たちの数回の呼吸のために一瞬でよどむ。
あたしの気持ちもそこに巻き込まれた気がして、少し視線を上げた。
「なんなんですか」
「え?」
「今も、すごく失礼なこと言いませんでしたか」
「なに、反応おっそ」
「あなたがおかしいんでしょ!?」
思わず声を大きくしてしまったあたしの口を、とっさに宮沢賢治の肩口が押さえる。
「(みゃー先生)」
押さえ込まれたあたしの耳元で、宮沢賢治郎がささやいた。
混んでいるし、このスペースのせいでまるで抱きしめられているみたいだ。
「(ここ、電車)」
「(誰のせいだと……)」
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