猛犬にはご注意ください

7/40
316人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
   食ってかかろうとして、気づいた。  こんな体勢でささやき合っていては、まるで電車が着くのを待てないバカップルにしか見えない。  どこの誰かわからない人にこのド-ベルマンとそういうくくりにされるのはごめんだ。  だがこの満員電車の中では身動きが取れず、ぐっと息を呑む。  その瞬間、宮沢賢治郎のにおいが鼻先をかすめた。 「(……アルカイックスマイルの、くそつまんねー女)」 「!?」 「(誤解のある言い方だと思って)」 「(……誤解じゃないなら、なんだって言うんですか?)」 「(そう言ってたのは、哲也先輩のトモダチ。俺の、別の先輩)」  やわらかくささやく宮沢賢治郎の声が思いの外おだやかで……。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!