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食ってかかろうとして、気づいた。
こんな体勢でささやき合っていては、まるで電車が着くのを待てないバカップルにしか見えない。
どこの誰かわからない人にこのド-ベルマンとそういうくくりにされるのはごめんだ。
だがこの満員電車の中では身動きが取れず、ぐっと息を呑む。
その瞬間、宮沢賢治郎のにおいが鼻先をかすめた。
「(……アルカイックスマイルの、くそつまんねー女)」
「!?」
「(誤解のある言い方だと思って)」
「(……誤解じゃないなら、なんだって言うんですか?)」
「(そう言ってたのは、哲也先輩のトモダチ。俺の、別の先輩)」
やわらかくささやく宮沢賢治郎の声が思いの外おだやかで……。
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