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誰なんだろうと思った。 「真帆。私だよ。わかる?」瑞季が言った。わからない。冷たい。ここはどこ? 真帆は震えながら夜道を歩いていた。何のために?街灯さえなかった。口唇が震えた。真帆は十字路の真ん中で仰向けになった。口唇が震えた。しばらくして車のヘッドライトが光った。 「こないだホーチミンに行ってきたんすよ。」和也が言った。「「Mr.」って声掛けられたから、その子とホテルに行って。そしたらいきなりガーターベルトのおもちゃ付けだして」 「でやったの?」客が訊いた。 「やりました。」和也は答えた。 真帆はぞわっとした。 「まあどんなことがあっても自分を否定しちゃだめだよね。」客が言った。 客はとなりの客と話している。シンナーやらシャブやらと。 真帆は部屋に帰ってシャワーを浴びた。鏡に映った背中の薔薇が血を流しているようにみえた。私は何をやっているんだろう。何のために。瑞季。私たち何がやりたかったの? 小さい頃に両親が離婚した。どちらも経済力はなかったが真帆と弟は母に引き取られた。それから5年後に父に会った。真帆を引き取れなくてすまなかったと謝られた。15のときから真帆は働いていた。栄で働けるようになって栄で働きはじめた。これがきっとあたりまえの生活で。他の世界なんて知らなかった。 真帆は夢をみていたようだった。それは小さな夢だったのかもしれない。それでも大切な夢にはかわりなかった。瑞季。私夢をみてたの。真帆は瑞季にしがみついた。瑞季の髪が真帆の頬に流れた。
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